なぜ車内販売は儲からないのか その2

 2018.02.21 Wednesday 

小さなワゴンに積めるだけの商品を載せて、列車の中を行ったり来たりする車内販売。

儲かるわけありませんよね。

 

あのワゴンに搭載している商品が全部売れていくらになりますか?

特急列車の編成がどんどん短くなってきているのに、売り上げ増は見込めますか?

まして、鉄道会社の営業のやり方次第でお客様の数が決まってしまうという商売で、その鉄道会社が真剣にサービスを考えていない状態ではお客様の数はじり貧ですから、いくら努力したって結果など出ない仕組みになっているのです。

 

だから、儲からないのは当たり前なんです。

でも、車内販売は必要なんですよ。

なぜならお客様へのサービスの部分であって、大して速くもない特急列車に高い特急料金をお支払いいただいているお客様へは、きちんとしたサービスをしなければ、お客様に選択されなくなってしまうからなのです。

 

だったら、いっそのこと、「売る」という考え方を捨てて、配ってしまったらどうでしょうか。

前回はこういうお話をさせていただきましたが、中には暴論だという方もいらっしゃるでしょうね。

 

鉄道が好きで、今でも東京から九州や北海道まで第一選択肢として鉄道で行こうと考えていらっしゃるような方々は、鉄道会社にとっては実にありがたいお客様で、なぜなら、その鉄道会社のファンだからです。ファンであるということは、他の人が知らないことまでよく知っていますし、その会社の味方にもなってくれますから、車内販売のワゴンが回ってくれば、一生懸命買ってくれるというのも事実のようですが、要はそういうことではなくて、脈々と続いてきた規則や体系が今の時代には合わなくなってきているということに気づいて、やり方や方法を変えて行かなければ、ファンならまだしも、新幹線でも飛行機でも高速バスでも、リーズナブルであれば別にどれでも良いという一般のお客様からは、特急列車は見向きもされなくなってしまうというのが現実味を帯びてきているのです。

 

さて、「車内販売は売ろうと思わないで配ってしまえ」、というのが私の考えでありますが、はたしてこれは暴論なのでしょうか。

実は私はずっと以前からそう考えて来ていたのでして、自分がいすみ鉄道の社長になってから、実際に「車内で商品を配ってしまえ。」ということをやってきているのです。

それが毎年1月2月に急行1号限定で行っている「朝食サービス」です。

 

毎年のことですが、1月2月はお客様が少ない時期です。

その時期に、わざわざ朝の9時過ぎに大原を出る急行1号に乗りに来ていただけるお客様というのは、大変にありがたいお客様ですから、そういうお客様に対して感謝の気持ちを込めて「朝ごはん」をサービスしたらどうでしょうか?

そう思って、いすみ鉄道はキハ52が急行列車として走り始めた当初から、1月2月の土日には、急行1号で朝食サービスを実施しています。

 

システムとしてはこうです。

急行1号の指定席にご乗車のお客様には、もれなく車内で朝食サービスがございます。

指定席券は当日発車前に大原駅でお求めください。指定席料金は300円です。

指定席は当日、大原駅で限定12席の発売です。

満席の場合はご了承ください。

 

告知はこれだけです。

あとはアテンダントが前日に12席分の朝食を用意します。

朝食はロールパン、ジュース、お菓子などの詰め合わせボックス。

1食当たりのコストは300円です。

 

つまり、お客様は指定席料金300円で、300円の朝ごはんを購入するということになります。

 

これをもし、「車内で300円で朝食を販売いたしております。いかがですか?」とアナウンスしたら、いくつ売れるでしょうか?

おそらく、大して売れないでしょう。

でも、「指定席ご乗車のお客様には朝食サービスがあります。」と言えば、指定席は満席になるのです。

 

おかげさまで先週も12席満席でしたし、少ない時でも7〜8席は売れています。

 

でも、当日販売で実際には何人来るかわからないようなものに、コストをかけて準備して、売れ残ったらどうするんだ、という考えの人もいるでしょうね。

私は逆です。もし12席の指定席を何かの手違いで13席売ってしまったらどうするんだ? と考えていますから、アテンダントには2食多めの14人分を準備しておけと命じています。

これは航空会社時代の経験ですが、いくらタダとはいえ、食い物の恨みは恐ろしいものです。ましてタダでもらえるともなればなおさらですからね。

実際に車内で乗車変更を希望される方もいらして、予備の分まで完売となる事象も発生しています。

 

そして、もし余ってしまったらどうするか。

朝食の内容は基本的には日持ちのするものがほとんどで、翌日にも翌週にも使用できますが、ロールパンなどのパン類だけは当日限りのものですから、そのパン類は運転士や庫内で作業している人たちの胃袋に入ります。

すると、彼らは、「このパン、硬いね。」とか「ロールパンじゃなくて、クロワッサンの方が良いよ。」とか、勝手なことを言い始めるのですが、これがアテンダントにとっては貴重な情報収集とコミュニケーションとなるのです。

 

そしてそのパンを焼いているのが地元の特別支援学校の卒業生が働いているパン屋さんですから、当然地域にとってもプラスになる。

そういうシステムを、何年も前からいすみ鉄道で実施しているのです。

 

なぜならば、このサービスを行うとお客様が増えるからで、300円の指定席に乗るためには、1500円の一日フリー乗車券をご購入いただくわけで、それにお土産品だって買っていただけるのです。

だから、車内販売は売ろうとしないで、配ってしまえと私は申し上げるのです。

 

何しろ、予約システムなどないいすみ鉄道でできているのですから、JRのような大きな鉄道会社でできないはずはないのです。

 

できないのではなくてやらないだけなのですよ。

 

でもね、何もすべての商品を配ってしまえと言っているのではありません。

例えばグリーン車ならお弁当とお飲み物。普通車ならばコーヒーと焼き菓子程度を車内でサービスするのです。

そうすると、それが呼び水になって、他の商品も売れるようになる。これが商売です。

 

路線にもよりますが、グリーン車の場合は前日の予約状況にプラスしてお弁当を用意します。

例えば、前日の予約数が20席であれば35食のお弁当を用意する。そうすれば、当日予約が入ったとしても対応できます。

グリーン車でひととおりお弁当を配り終えたら、残ったお弁当を普通車のお客様用に販売すればよいのです。

普通車のお客様にはバルクで対応できるコーヒーやジュースと、余剰分は後でも使える箱入りの焼き菓子であればロスが出ませんよね。その焼き菓子の箱に特急列車のマークでもついていれば、ご乗車記念の限定品になりますね。

そういうスタイルのサービスをして、その分の経費はお客様にお支払いいただいている特急料金の一部、グリーン車ならせいぜい1000円程度、普通車なら300円程度の原価で、乗車券、特急券を払っていただけるお客様そのものが増えるのであれば、やる価値はあるのではないでしょうか。

 

できない理由を並べるよりも、まずはやってみること。

 

それが民間会社の知恵なのですからね。

 

 

 

いすみ鉄道の朝食サービス。

観光のプロで私の仲良しの友人が感激してFBにUPしてくれました。

 

観光のプロが感激する原価300円で「行って来い」のいすみ鉄道のサービスです。

逆に言えば、いすみ鉄道はたった300円で、観光のプロでさえ感激させるサービスをしているということです。

 

全国の鉄道に普及させたいですね。

 

いすみ鉄道の朝食サービス。今度の土日が最後です。

皆さん是非ご乗車ください。

 

といっても12席限定ですけどね。

 

「あと2食あるはずだ。」なんてアテンダントのお姉さんに食って掛からないでくださいね。嫌われますから。(笑)

 

商売というのは、こういうものなのですが、どうも公務員には理解できないようで、そこが三セク社長としての私の悩みなのです。

 

(おわり)

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