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なぜムーミン列車なのか?

 2015.04.07 Tuesday 
「わあ、ここにはお城があるんですね。」

大多喜駅に降り立った観光客の方が良く口にする言葉です。

今、いすみ鉄道に乗ってきて、大多喜駅に降り立つお客様のうち、おそらく8割以上が、大多喜には用がない方々です。
大多喜が本多忠勝の城下町だとか、お城があるとか、そういうことは全く知らない人たちがほとんどで、要は、大多喜には用がないけれど、いすみ鉄道に乗りに来てくれて、たまたま降りたところが大多喜だった、という方々なんです。

たぶん大多喜の皆さんは、自分たちの町は徳川四天王の一人、本多忠勝の城下町であり、本多忠勝は負け知らずの戦国武将だったということで、歴史に興味がある方々がたくさん来てくれているんだと思っているかもしれませんが、実際にはそんなことは全く関係なく、いすみ鉄道をお目当てにいらしていただいた方が、大多喜の町を足早に通り過ぎていくだけなんですね。

だから、列車を降りて、「ここにはお城があるんですね。」などと不思議そうな発言をするわけですが、大多喜で途中下車してくれる方々はまだよいとして、大多喜には興味がなくて、ただ通り過ぎていくだけの方々もたくさんいるわけです。

駅前の観光協会の皆様方は、毎日そういうお客様に接しているわけですから、目の前にいる観光客は本多忠勝の城下町をお目当てに来た人じゃないということはわかりますし、そういう大多喜に興味がない、偶然大多喜に来た人たちに向かって、一生懸命大多喜の宣伝をして、大多喜のお土産を買ってもらおうと、真剣になっています。こういう大多喜に無縁の方々がいらしてくれているということは、大多喜にとっては新規顧客の開拓をしていることと同じですから、観光協会の事務局長さんたちは、そういうお客様を相手に、一生懸命大多喜の町の宣伝をしたり、パンフレットを用意したり、大多喜町の商品を買ってもらう努力をしているわけですが、町の実力者の中には、「観光なんて遊びだ」と思っている人もいますから、「観光客が来るとトイレが汚れる。」とか、「観光客が来るとゴミが増える。」などと考えている人もいますし、この観光客を町の経済に取り込んで、大多喜から地方創生をやろうなんてことは、全く発想に無いのが実情です。

同じように、最近ではいすみ鉄道のレストラン・キハをお目当てにいらっしゃるお客様のほとんどの人が、自分が乗っている車両はキハ28と言って、全国の急行列車に活躍した歴史的な車両であって、昭和39年に製造された日本でたった1両しかない現役車両だ、などということは全く関係なく、車内で純粋にお刺身やイタリアンを堪能されている方々ばかりで、たまたま乗っているその車両がキハ28だったというだけのことなのです。

このように、今、いすみ鉄道に乗りいらしていただくお客様は、もともと大多喜に興味があるわけでもなく、鉄道マニアでもない方々が主流なんですね。

もちろん、これだけ賑わっているこの鉄道が、6年前までは廃線の危機にあって、今現在も財政支出が年々厳しくなる行政から見たら、路盤の維持管理にかかる年間3千万ほどの費用はできれば払いたくない。だから、できるだけ目立たないように、フェードアウトしてくれないかなあ、と思われているなんてことは、今いらしていただいているお客様にしてみたら、知らない方々がほとんどなんですね。

そこで本日は、いすみ鉄道がなぜムーミン列車を走らせているのか、というお話をしましょう。
昔からいすみ鉄道を応援してくれている皆さんから見たら、いまさら何をとおっしゃられるかもしれませんが、最近の方々は知らない方ばかりですので、何度も声に出して言わなければだめなんですね。

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6年前に私がいすみ鉄道に就任してすぐに始めたのがムーミン列車です。

私は子供のころから鉄道好きで、そういう社長だからキハを走らせているんだろうと思っている人が多いと思いますが、実は私はキハを走らせる前にムーミン列車をスタートさせていて、ムーミン列車である程度集客ができるようになって初めて、キハを走らせるようになったわけです。

社長が鉄道が好きだからキハを走らせるというというのは、自動車ディーラーや保険代理店に就職して、真っ先に家族や兄弟、友達に商品を販売するのと同じことですから、そういうやり方では先が見えているし、安易すぎると私は考えて、最も苦手とする子供や女性向けのアニメの世界から始めたのですが、どうしてムーミンだったのかという理由は、

1:ムーミンたちは、自然を愛し、家族みんなで仲良くお花畑の中で暮らしている。

2:ムーミンのお話の世界には相手をやっつけるとか、勝った負けたということがなく、相手を尊重し、優しく接している。

これが大きな理由です。
お花畑の中で暮らしているのがムーミン谷であり、いすみ鉄道もお花畑の谷を抜けて走ります。
ローカル線に乗りにいらしていただくということは、観光客の皆様方にとっては「非日常」「脱日常」の体験ですから、のんびりとした雰囲気を楽しんでもらおうということです。

でも、それだけではありません。

3:ムーミンは女性ファンが多い昭和のアニメです。ムーミンを見て育った方々は皆さん30代、40代になられています。
その年代の方々というのは、実は今、日本の観光や消費を支えている方々ですから、そういう女性を取り込むことで、観光鉄道としてやって行かれると考えたからなんです。

だから、いすみ鉄道はムーミン列車を走らせているんですね。

そのムーミン列車が2009年10月に走り始めて、いすみ鉄道が観光鉄道としてやっていかれる目処が立って、廃止という話が一時ストップしました。
そこで、次の手を打つために2011年4月から走り始めたのが昭和のディーゼルカー、キハ52なわけです。

ムーミンが女性向けならば、キハ52は男性向けでありますが、たいていの場合、女性が集まるところには男性が集まるというのが世の常でありますから、女性向けのムーミン列車の次は男性向けのキハというのは、商品の品ぞろえとしては正しいのであり、ムーミンとキハに共通して言えるのは、「どちらも昭和である。」ということですから、懐かしい日本の原風景のような沿線を走るいすみ鉄道としては、ぴったりではないかというのが、私がムーミン列車、そしてキハをやっている大きな理由なのであります。

とりあえず、ご理解いただけましたでしょうか?

この話は、もっともっと続きます。

(つづく)



up 2009年10月に走り始めたムーミン列車が初めての春を迎えた2010年4月の様子です。
まだまだ観光客も少なく、キハがお目当ての撮り鉄さん方もいませんでした。
今から見たら、とても静かな春だったのです。

(写真提供:川田さん。て言うか、川田さん、お借りしました。)
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