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田舎でコストは論じるな。

 2016.10.27 Thursday 

田舎に住んでいらっしゃる皆様方に知っていただきたいことがあります。

 

それは、都会の人たちの多くが、田舎にあこがれているということです。

 

都会のマンションに住んで、満員電車で都心のオフィスに通勤している都会の人たちの多くは、「たまには田舎へ行きたいなあ。」と思っていて、そういう人たちの心をひきつけるのが漁村や田園の風景だったりするわけで、そういう気持ちに訴えかける絶好のツールがローカル線だと私は考えています。

 

ふだん満員電車で会社へ通っている人たちが、休みの日にローカル線に乗りに来る。

これは事実です。

でも、その人たちはマニアでもなんでもない人が多く、マニアでもない人が、毎日満員電車に乗っているにもかかわらず、休みの日にまた電車に乗りに来るのがローカル線です。

 

それはどうしてかというと、満員電車は会社へ行くための手段でありますが、ローカル線は乗ることそのものが目的であって、マニアでもなんでもないふつうの人から見ると、ローカル線と言えば駅弁であったり、地域の食材であったり、地酒であったり、温泉であったり、温かな人情であったり、そういうものをイメージさせるのですから、地域の広告媒体としては最適なツールなのであります。

 

今の時代は、地方創生が叫ばれていますから、都会からの交流人口を増やさなければなりません。

そのために、田舎の人たちは一生懸命イベントをやったりしていますが、例えば秋の今頃の季節は、田舎では毎週どこかで何かしらのイベントをやっていて、確かにその時は賑わうかもしれませんが、そのうちに皆さん疲れてきて、いわゆる「イベント疲れ」状態になってしまいます。

 

役場の若い職員の人たちは、今の時代はとにかく熱心な人が多くて、房総半島あたりからだと、しょっちゅう都会へ出て行って地域の宣伝をしたりしてがんばっています。

世の中、公務員を批判する人が多くいますが、私はこういう田舎で頑張っている若手を見ていると、都会のサラリーマン以上に働いているのがわかりますから、「擦り切れてしまうのではないか。」と心配になってくるのですが、とにかくそれほどイベントが多い。

でも、イベントというのはその時だけのことじゃなくて、それを起爆剤として、そのあと継続して人に来てもらわなければ、地方創生の意味がありません。

そういう点では、ローカル線は都会の人から見たら、走っていることがすなわちイベントのようなものですから、特に何かをやらなくたって、毎日きめられた仕事をしているだけで、人が来てくれるありがたいツールなのです。

 

都会の人が田舎にあこがれている証拠に、都会の人は家庭菜園をやりたがっています。

マンションのベランダのような狭いところでも、プランターを置いて、野菜などを作っています。

例えば、家庭菜園でトマトを一つ作ることを考えたら、いったいいくらかかるでしょうか。

土に肥料を与えて、手間暇も考えたら、きっと1個数千円するかもしれません。

そんなことをしてトマトを作るぐらいなら、近所の産直ショップへ行って、農家の採れたてトマトを買ってきた方がはるかに安上がりで、味もおいしいはずです。

 

例えば都会の人は、わざわざ田舎へ来て釣りをやります。

房総半島の場合は海釣りですから、釣り船を借りて、沖に出て、太公望を目指します。

そこで、50センチぐらいの例えば「わらさ」や「ボラ」を釣り上げて大喜びしていますが、その1匹の魚を手に入れるために、いくらかかっていますか。

釣り船の船頭さんはプロの漁師ですから、ポイントを知っていて、必ず成果が出るように配慮してくれていますが、それだってコストを考えれば一匹数千円はするでしょう。往復の交通費や自分の時間もコストとして考えたらもっとです。

魚を手に入れるだけなら、新鮮な魚屋さんで買えばよいのですが、では、どうして都会の人たちは家庭菜園をやったり、わざわざ釣りをしに来るのでしょうか?

それは、田舎にあこがれがあるからだと私は考えています。

 

つまり、極論を申し上げれば、田舎にあこがれがある人たちイコール観光客で、その観光客の皆様方は田舎にコストを求めていないということになるのです。

 

今の時代、何でもかんでもコストコストと言われます。

でも、それって東京の大企業の話であって、例えば東京の大企業と勝負しようと思うから、田舎の農作物や海産物にコストの理論が導入されてしまってTPPとかになるわけで、そうなると田舎は必ず負けてしまいます。

コンビニの弁当は500円も出せば立派な弁当が手に入ります。

安上がりにお腹を満たすのであればそれで十分です。

コストを考えたら、駅弁などはたいてい1個1000円か1300円ぐらいしますから、勝負にならないんです。

でも、都会の人たちはみな駅弁を買います。

どうしてでしょうか。

その理由は、駅弁はそこでしか売っていないものだからであり、地域の名産品だからであり、そういう駅弁のような商品を前にすると、コストという言葉の優先順位はかなり低くなるのです。

 

にもかかわらず、田舎の人たちはコスト意識を求める。

特にローカル線に対して、赤字だとか黒字だとか言い過ぎる傾向があります。

 

赤字か黒字かという議論になれば、バスにすれば十分なわけで、ローカル線という鉄道路線が、地域の広告塔として、域内輸送以外にどれだけ力を発揮することができるのかということは全く問われていないのです。

 

でも、近年、田舎は確実に変わってきています。

私は、北海道と岐阜県と福岡県と鹿児島県で、せっかくあるローカル線をもっと使うにはどうしたらよいかという会議やプロジェクトに参加させていただいていますが、そういう地域では、「確かにローカル線はバスに比べればコストはかかるけど、いすみ鉄道の事例を見れば、そのコスト以上の効果があるはずだから、それをどうやって掘り起こせるかが地方に問われているんだ。」ということをご理解いただいているからこそ、私の力を借りたいとおっしゃっていただいていると考えています。

いすみ鉄道という、房総半島の、全国的に見たら下から数えた方が早い営業係数のローカル線ではありますが、北海道や九州の行政の皆様方が注目していただいているのですから、これは営業係数では測れない、もっと他のメジャーがあるということだと私は確信しています。

 

それともう一つ。

コストというのは都会の物差しです。

都会というのは、例えれば大企業です。

田舎は中小企業、あるいは零細です。

そういう零細企業が、大企業と勝負をするときに、大企業の理論を使って、大企業の土俵で勝負してどうするんですか。

そんなことをしたら、必ず負けてしまうのです。

 

今は、ダイバーシティの時代であり、ヴァリュー・エンジニアリングを駆使して、できるだけ付加価値の高いKPIを設定し、PDCAサイクルで効果検証していくのが時代の流れではありますが、こういうことを田舎の人たちは何の事だか理解していませんから、大企業の理論に乗っかっては駄目だということなのです。

 

そうではなくて、田舎ではコストを度外視にしてでも手に入れたい、体験したいことが山ほどあって、都会人はそれを求めているのですから、つまりは粗利が大きい商売が可能だということなのです。

 

私が就任当初から申し上げている通り、田舎にはお金がたくさん落ちているのです。

 

日本全国の田舎のみなさん、自分たちの地域が都会相手に何で勝負できるか、この辺りでじっくり考えてみませんか。

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