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No Change Given

 2017.05.09 Tuesday 

ハードディスクの中の昔の写真を見ていたら、こんなのがありました。

 

「No Change Given」=「お釣りは出ません。」

 

ロンドンのバスの券売機。

10年ほど前に撮った写真です。

 

 

 

航空会社を辞めてから8年になりますから、ロンドンも8年以上行ってませんので、今ではどうなってるか知りませんが、お釣りの出ない券売機にある種の衝撃を受けてシャッターを切ったと思われます。

ロンドンのバスというのは、皆様ご存知の赤いバスですが、旅行者には実に乗りにくいシステムになっていて、まず、現金で払うことができません。いくらピッタリの金額を持っていたとしても、現金だと受け付けてくれません。たぶん、運転士が現金を扱ってはいけない規則にでもなっているのでしょう。最初は驚きました。だって、バス停でなかなか来ないバスを待ってやっと来たと思ったら、運転士が「切符をあらかじめ買ってなければだめ!」と言って、バスが行ってしまうんですから。

では、その切符はどこで買うのかといえば、バス停にこのような券売機があるのは良い方で、街角にある小さな個人商店だったり、キオスクのような小さな売店だったり、不慣れな旅行者だと実にわかりずらいところで細々と売っているのです。

 

ロンドンではここに写っている青いオイスターカードというのが一般的で、まあ、東京で言えばパスモとかスイカに当たるのですが、それを持っていると実にスイスイと交通機関を利用できるようになっているのですが、初めて訪れた観光客にしてみたら、次に乗るかどうかも分からないものに金額をチャージするのも気が引けますから、当然現金で乗ろうと思うのですが、現金では乗れません。じゃあ切符を買おうと思ったら「お釣りは出ません。」「ちょうど、ぴったりの金額を入れてください。」と券売機に書いてある。しかも1回2ポンドで、1日乗車券が3.5ポンド。当時の1ポンドは約250円でしたから、1回バスに乗るのに500円。1日乗車券との金額の差はわずかです。だったら1日乗車券にしようかなと考えるでしょうが、それでもピッタリの金額を持っていなければ買えませんから、実に不親切というか、不便というか。

ちなみにオイスターカードを持っていれば、バスの乗車料金も現金で払うと500円のところが200円ぐらいになるのです。

ロンドントランスポートという日本で言ったら東京都交通局のようなところが運営している公共交通機関で、これってありなんですか? と思ったことを記憶しています。

 

(とはいえ、一部区間では無料でバスに乗れたりするところもあるわけですから、システムとしてはよくできているのもまた然り。10年近く前のこの写真だけで一概にサービスが悪いとは言えませんが。)

 

日本の公共交通機関が同じことをやったら、クレームが殺到するのではないでしょうか。

多分ロンドンでも同じだと思います。だから機械に電話番号とメールアドレスが書いてある。

「ご意見はこちらへ」って。

でも、そんなところに電話をかけたとしても、会社の運営システムの話ですから、せいぜい「今後の参考にさせていただきます。」というのが関の山で、いちいち相手にしてはもらえません。

そんなもんです。

 

道行く人たちを相手にする商売であっても、いちいち通りすがり人のクレームなどは真に受けないのです。

 

私がこの機械を見て「親切だな。」と思うのは電話番号が書いてあることで、今ならメールアドレスだけでしょうね。

 

それに比べたら日本のシステムって実にやさしいと思います。

 

それはなぜか。日本ではいろいろな所でまだ「人」が関わっているからだと思います。

 

地下鉄の駅にはたいてい改札口のところに駅員さんがいて、わからないことを教えてくれたり案内してくれます。でも、ニューヨークでもパリでも、地下鉄の駅の改札口に駅員さんがいるなんてところは、大きな駅以外にはあまりありません。

いちいち人が関わることは、イコール人件費ですから、まず最初に削減対象になります。

だから、いないのです。

だから、お客様は自分のことは自分で考えて行動するしかない。

つまり、不慣れな人は500円の切符を買って、知っている人は200円で乗れるということが起こるのです。

そして機械には「次回のご利用の際は便利でお得なオイスターカードをご準備ください。」って書いてあるのです。

 

日本はまだまだ優しいところがありますから、いちいち、どこの誰かもわからない人のクレームに真面目に対応してくれるところが多いですが、それは優しさなのか、それとも弱さなのか。クレーマーやごね得を許さない毅然とした態度を求められる時代がもうすぐそこまで来ているような気がします。

 

こういう世界的な傾向の影響を日本で一番最初に受けるのが航空会社です。

そしてそれはLCC(格安航空会社)という最新システムにここ数年登場しています。

 

電話予約? できません。

現金支払い? 割高ですよ。

決められた時間までに来ないと乗れません。お客様の自己責任です。

お客様の自己責任ですから、払い戻しも致しません。

 

LCCではこれがふつうです。

「お前のところはサービスが悪いじゃないか?」

お客様がそうクレームしようものなら、「そういうサービスをしない分、お安くなっているんですよ。」と言われて終わりです。

クレームにならないし、第一、クレームする場所もメールですから。

いちいち電話など受けていられないのです。

そして、それでもよいというお客様で飛行機の座席が埋まれば商売が成り立つのです。

 

今の時代、LCCだけではありませんが、同じ飛行機の中で隣に座っている人がいったいいくらの切符を買っているかなど誰もわかりません。手荷物だって、事前申告して事前支払いをしているのと、当日空港で「超過してますよ。」と言われてしぶしぶ払うのとでは値段が全然違います。

こういう価格の多様性というものが、会社が設定した運営システムを知っているのと知らないのとでは、受けられる利益が全然違う時代がすでにスタートしていて、それに対するクレームも受けてもらえない時代になっているのです。

 

気が付けば鉄道もそうですよね。

快速電車のグリーン車なども、前もってグリーン券を買っているのと、車内で乗務員から買うのとでは値段が違うのも当たり前になっています。でも、そのためには交通系カードが必要だし、会社が決めた運営ルールの知識を事前に持っていなければ利益を受けることができないんです。

 

「No Change Given」(お釣りは出ません。)

 

考えてみたら、若い人は知らないかもしれませんが、昔は公衆電話でも100円玉が使える黄色い公衆電話は「お釣りが出ません」って書いてありました。

駅の券売機でも、単能式というのがふつうで、30円なら30円の切符しか買えない券売機が並んでいて、初期の頃は10円玉3枚無いと切符が買えませんでした。

そう考えると、若い人よりも、そういう時代を経験してきたおじさんやおばさんの方が、システムの変化に対応できるかもしれませんね。

 

現在は多様性の時代ですから、いろいろなことを経験している人間の方が適応力が高いかもしれないと、時代遅れのおじさんでも自分にかすかな望みをつなぐことができるのも、多様性なのだと思います。

 

ちなみに、いすみ鉄道は世の中の流れとは逆に、できるだけ「人」が関わることで「懐かしさ」を味わっていただこうという考えです。だから、乗ったあとから1日乗車券があることを知ったお客様にも変更の対応をしたりしていますが、だからと言ってお客様にわがままを言わせ放題ではありません。特に高校生などは職員がお客様を教育的指導する場合もありますから、甘く見てはいけません。

なぜなら、いすみ鉄道には今でも昭和が残っていて、昭和の時代は駅員や車掌からいろいろ人生勉強させてもらった時代ですからね。

社会勉強させてもらった昭和の高校生が、今、勉強を教える側になっているということなのであります。

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