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貨物はいつも片道輸送

 2018.05.08 Tuesday 

北海道の物流の輸送量の資料を見ていたら、農産物、畜産品などの物流量がとても多くて、例えば北見のたまねぎや、十勝の馬鈴薯など、人口の少ない地域で大量に生産される農産物などを札幌や道外へ運ぶのがいわゆる貨物列車の役割なのは皆さんもご存じの通りですね。でも、その資料によると、道東地区から札幌に到着した貨物列車は、半分近くが空荷で釧路や帯広、北見方面へ帰っているようで、そこの部分が輸送コスト上の一つのネックになっているのではないかという議論があるようです。

この資料を見て、私は、「やっぱりそうか」と思いました。

なぜならば、以前航空会社にいたときに貨物部のマネージャーから、

「鳥塚君、旅客は往復だけど、貨物は片道なんだよ。」と言われたことを思い出したからです。

 

もう今から20年近くも前になりますが、その時、貨物部のマネージャーが言うには、「行った人は戻ってくるけど、行った貨物は戻ってこない。だから、貨物の営業は大変なんだよ。」ということでしたが、確かにその通りですよね。

 

旅客というのは出張や旅行などがほとんどで、例えば「赴任」や「移住」などという人は数えるに足らないボリュームです。だから、旅客というのは行ったら必ず帰ってくると考えることができます。もちろん、行きは新幹線、帰りは飛行機などと往復でコースや手段を変える人たちはいるものの、行ったきりの人はほとんどいません。だから、鉄道会社も航空会社も、行きも帰りも乗ってもらおうと、例えば往復割引や、パッケージなど、各種営業戦略を展開しているのですが、貨物の営業マンはそういう「往復商品」を作ることもできなければ、売ることもできないというのが、貨物を運ぶという「商品」の特徴なんですね。

だから、北見で玉ねぎが取れる、帯広で馬鈴薯が取れればとれるほど、札幌行の貨物列車は満載だけど、札幌から戻る列車のコンテナの中は空っぽになってしまうという現象が起きるのであって、これが無駄と考えられてしまうのです。

 

では、航空会社はどうしているのかというと、貨物専用の会社は別として、航空会社は基本的には貨客混載なんです。多くの飛行機は、上の部分に旅客を乗せて、下の部分に貨物を搭載している。そうなると、たとえ貨物が半分しかなくても、その分旅客が多ければ運航的には利益が出る構造になっています。たとえばゴールデンウィークや年末年始などは、工場や会社などがみんな休みになりますから、貨物はほとんどありません。大型ジェット機の下の部分はほとんど空で飛んでいきます。でも、上の部分のお客様は満員で、そういう時のお客様からはピーク時の高い運賃をいただいているのですから、貨物が空でも取り立てて気にする必要はありません。

 

逆に、貨物の量が多い時というのは、世の中が一生懸命働いている時期ですから、旅行する人は少ない時期で、上の部分は座席が空いていますし、お客様一人当たり支払われる航空券の料金もピーク時に比べれば半額以下です。だから、上の部分だけ見ていると、「こんなに空いてて大丈夫かなあ。」と心配になるんですが、そういう時は下の部分でしっかり稼いでいますから、トータルで考えれば、それで儲かっているんだということになりますね。これって、飛行機はある意味しっかり上下分離、いや、上下融合しているんじゃないかと私は考えます。

 

でも、どうして飛行機でできていることが鉄道でできないのか、不思議だと思いませんか。

 

さて、今度はお客様のことを考えてみましょう。人口は都市部に集中していますから、地方から都市部に出かけるお客様の数と、都市部から地方に出かけるお客様の数は、どうしても後者の方が多い傾向があります。

いわゆるマーケットのパイの大きさが違いますから、これは当然のことで、例えば北見や釧路から札幌へ旅行する人よりも、札幌から北見や釧路へ旅行する人の方が多い。会社の数も多いから出張も多いですしね。

全国的に見たら、札幌から東京や大阪へ来る人の数よりも、東京や大阪から札幌へ行く人の方が人数としては多いわけで、それはやはりマーケットのパイが違うからなんですが、つまり、貨物は地方から都会へという流れがあるのに対して、旅客輸送は都市部から地方へという流れが多いわけです。

今は観光の時代ですから、お客様の気持ちとしては都市部から田舎へ出かけたい。その過程で、行きはのんびり楽しみながら行って、目的地について楽しんだ後は、飛行機でさっと帰ってきたいというのが旅行者の心理だと思います。その証拠に、かつての北斗星もトワイライトも、北へ向かう列車の方が乗車率が良かったですからね。東京や大阪の人たちは、まず行きに列車でのんびり行く。そして帰りは飛行機でサッと帰ってくる。そう考えてみたら、観光旅客輸送は片道輸送の傾向があるんです。

それも、田舎から都会へという貨物輸送と全く逆の傾向がある。

 

さて、皆さんだったらどうしたらよいと思いますか?

 

私だったら往路は貨物、復路は旅客という列車を作ればよいのではないかと思います。

 

昨今の北海道観光を見ていると、周遊型というよりも片道型というスタイルが増えているようです。

例えば札幌 in の釧路 out、札幌 in 女満別 out というようなコースですが、皆さん都会から田舎を目指す傾向がありますから、北海道でいえば好まれるのは「さいはてへの旅」ということになります。

東京や大阪から札幌へ飛んできて、札幌から道東や道北を目指す旅で、目的地に到着したら飛行機でサッと帰る。

つまりこれは、観光旅行としての片道輸送になるわけですが、こういう輸送を、札幌から道東地方へ戻る空荷の貨物列車に客車を数両連結して行えば、旅客用の乗務員は必要になりますが、運転士は一人で済みますし、ダイヤも1本で済むというものです。

そのダイヤを少し改良して、途中駅で長時間停車したり、あるいは夜行列車として走ったり、そういういろいろ観光的な要素を盛り込めば、もともと「1分でも早く目的地へ到着する。」という必要がないのが観光客輸送ですから、今あるものを少し変えるだけで、立派に観光列車が運転できると思いますし、貨物の帰りの空荷輸送を少しでも減らせるのではないでしょうか。

 

例えば週の平日に3日ぐらいそういう客車を貨物列車に連結して道東地区へお客様を運ぶでしょう。

そうすると、例えば客車3両を連結して運転するとして、3両×3日で網走や釧路に1週間で客車が9両溜まるわけです。そうしたら今度は週末運転の観光列車として、9両編成で土曜日か日曜日に札幌に1日かけて戻ってくれば、車両のローテーションはできますよね。

貨物輸送というのは季節だけじゃなくて曜日でも需要の増減がありますから、週末の荷の少ない時に貨物の機関車が1週間分の客車を札幌へ戻しちゃえば良いのです。

オペレーションコストを低く抑えて、通年型観光列車の出来上がりというわけです。

 

「貨物列車に人を乗せるなんて、おまえは何を考えてるんだ。」

 

と眉をしかめる人はいると思いますが、でも、今の時代は多様性の時代。

東京の電車で宅急便を運ぼうという時代ですよ。

旅客列車で荷物や貨物を運ぶというのなら、貨物列車で人を運んだって全然問題ないじゃありませんか。

まして飛行機では当たり前にやっていることなんですからね。

 

鉄道が貨物と旅客を完全に分離したのは30年前に旅客鉄道と貨物鉄道を作って棲み分けを行ったからで、その前は旅客列車と貨物列車が1本の列車として走っていたんですから。

若い人たちはご存じないと思いますが、貨物と旅客を一緒に運ぶ列車を混合列車といって、貨物量が少なく旅客数も少ないような路線では、日常的に行われていたんです。今思えば、考え方としては実に合理的だったと私は思います。

 

あとは、制度や仕組みを変えるだけなんです。

大きなお金を投資して何か新しいことをやるのは難しいけど、制度や仕組みを変えることで、いくらだって可能性が見えてくる。

これが多様性の時代ですから、貨物列車に人を乗せるぐらいのことを考えないと、JR北海道の問題は「どーにもならん」のだと思いますよ。

 

第一皆さん、札幌貨物ターミナル発、新富士行の列車で、ディーゼル機関車が引く客車列車があったら、スーパーおおぞらのグリーン車の倍ぐらいの料金を払ったとしても乗りたいと思いませんか?

別に札幌駅や釧路駅に直接乗り入れなくたって、それほど大きな問題にはならないと思います。

 

そういう列車に乗りたいと思う人が、一週間に客車数両分いればそれで良いのですから。

 

東京や大阪から飛行機で札幌に到着して、道東まで汽車で旅行して、最後に釧路や根室でおいしいものを食べて、釧路空港から飛行機でサッと帰る。

平日限定、2泊3日で東京・大阪発5万円台の観光列車旅。

なんてことは、いくらでも可能な時代だと私は考えます。

 

昭和の時代の混合列車。小海線です。

貨物と客車が1つに連結されて当たり前のように走っていました。

 

こちらは函館本線。

先頭はディーゼル機関車で、6両編成の列車のうち、前から2両半が荷物や郵便を運んでいます。

 

そろそろ、こういう時代が来ても良いのではないでしょうか。

いや、こういうことをやらないと、地方はどうにもならなくなってしまうのだと、私は思います。

 

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