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安全は神話ではない。

 2011.10.22 Saturday 
成田空港に勤務していた時の私の肩書は旅客運航部長。

日本の会社でしたら旅客部と運航部は別の部署になるのでしょうが、外国の航空会社は小さな所帯が多いので兼務です。

旅客部はチェックインや搭乗ゲートなどお客様のこと。
運航部はフライトプランや燃料・重量計算、搭載などを管轄します。

その私に課せられていたもう一つの任務が安全監査官。

社内資格ですが、いろいろな空港を回って、規定通りに業務が行われているかを調べる監査を行う調査官です。

アジア太平洋地域は本社から離れているため、香港、シンガポール、バンコク、成田など、お互いの空港の監査をお互いで行うシステムで運用していましたが、私は北京、上海、シンガポール、台北、シドニー空港の監査を担当していました。
また、成田にも他の空港から監査官がやってきて、その際に応対するのも私の役割でした。

安全監査官として空港の監査を行う場合のポイントは次のような所になります。

・以前の監査記録をチェックし、指摘されている個所が改善されているかどうか。
・以前の監査以降に運用が変更になった点はないか。ある場合は変更点が基準に合っているかどうか。
(就航機種、ターミナル、業務委託業者などが変わっていないかどうか。)
・以前の監査以降に変更されている規則、規定に対応しているかどうか。
(機内持ち込み制限品などが厳しくなっている場合など。)
・訓練記録、健康管理記録などがきちんとファイルされているかどうか。
・規定で求められている書類、資格等が有効でかつ適切に管理されているかどうか。
・実際の運用が、規定通りに行われているかどうか。(実地検証)
・直近の事故例などTOPICになっている事項にどう対応しているか。
(乗務員の飲酒事例、薬物の服用、インフルエンザなど伝染病の蔓延、睡眠時無呼吸症候群など、その時々で新しく発生した事例への対応策がとられているか。)

などです。

航空業界の場合、日本は欧米から比べると遅れているところがたくさんあります。
例えば、私が勤務していた時期に、どこかの空港で、燃料給油中にスパークが発生し、給油係員に引火して死亡事故になったケースがありました。
このようなケースが世界のどこかで発生すると、すぐに本社から成田へも通達が送られてきて、きちんと対応しているかどうかの報告を求められます。

火災などランプ(駐機場)で異常事態が発生した時の手順として、ランプの片隅に設置してある緊急給油停止装置を近くにいる職員が操作する規定がありますが、他の空港から来た監査官(外人)が、その「緊急停止装置」と書かれた表示を見て、「どうして日本語だけなのか? 英語表記をしなければ判らないじゃないか。」となるわけです。

社内監査ですから、当然監査官も同じ航空会社の人間。
ところが、緊急停止装置を含めた空港施設を管理するのは、空港公団(当時)や国交省なわけです。
つまり、お上に対して「安全を守るためにちゃんとやってください。」と注文を付けるわけです。

成田空港のランプには「禁煙」の表示がありませんでした。
空港公団や国交省に言わせれば、ランプへ出ることができる職員は訓練を受け、試験に合格した人間だけであり、その訓練の項目に「ランプ内は禁煙である。」という項目があるのだから問題ない、という見解でしたが、航空局はすごくフレキシブルで、外国で発生した事例に基づく私たちの要求や助言には聞く耳を持っていただき、緊急停止装置や禁煙サインなどを変更していただきました。


up シンガポール・チャンギ空港で搭載手順を実地検査。


up チャンギのゲート進入誘導装置。北緯1度と書かれているのが赤道直下の証拠


up チャンギ空港のタグカー運転席。運転士(職員)向けに速度制限とNO SMOKINGの表示が大きく書かれている。

とにかく世界には日本の常識では考えられない場所が存在します。
同僚の話ですが、途上国に行くと、業務委託している会社の職員がランプで裸足で作業している。
会社からはきちんと制服や安全靴が支給されているのに、どうしてかと聞くと、「高く売れるので皆売り払ってしまった。」と平気な顔をしているそうです。
国によっては、飛行機に貨物を搭載する際に使用するアルミ製のコンテナが道路わきに置いてあって、何だろうと見ると、中に人が住んでいるようなところもあるわけです。

そういうところでも、同じ安全基準で航空機を運航しなければならないわけですから、航空会社の安全監査官という仕事は責任重大だったわけです。


up 上海プードン空港を出発するB777。プッシュバックにもさまざまな規定があり、それがきちんと行われているかを確認する。


いすみ鉄道は昨日まで3日間、国土交通省による安全監査が実施されました。
監査が行われるということは夏ごろには私の耳に入ってきていましたが、私は各管理職者に対して特別な指示はしませんでした。

監査官はこういうところを中心に見るはずだから、それに対して準備するように・・・

というようなことは「安全」を考えた場合に言うべきではありません。
また、社長である私が安全対策にいろいろと口を出し始めると、過去の事例や経験から見ても組織内がぎくしゃくすることが予測されますから、これも安全に対してはマイナス要因になります。
経営側が安全に口を出すということは、経費に直結するから、どうしても対策がおざなりになるというのが過去の事例から学習できることですからね。

監査を受けて、いろいろ指摘されて、冷や汗をかいて、身をもって会得するしかないと思うのです。

これが安全に対する心構えではないでしょうか。

私の著書 「いすみ鉄道公募社長・危機を乗り越える夢と戦略」 の46ページに書いていますが、いすみ鉄道には荒井工務課長のような国鉄時代から40年以上この道ひと筋のプロ中のプロがいるわけですから、彼らを信頼し、彼らの経験と知識を十分に発揮できるような環境作りをすることが私の仕事であると思っています。

安全は紙に標語を書いて壁に貼っておくだけのものではありません。
お題目を唱えていれば守られるような神話ではなく、日々毎日、身をもって、肌で感じで改善していく実践なのです。


監査官として3日間お仕事をしていただきました国交省の皆さま、おつかれさまでした。 そしていろいろとご指導いただきましてありがとうございました。
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